2009年12月18日

エキノコックス症をめぐるキツネと人間

エキノコックス症をめぐるキツネと人間

 現在、北海道ではキツネが媒介するある病気のために、彼らと人間との関係が非常に微妙なものになっています。この病気をエキノコックス症といいます。

 エキノコックス症は、サナダムシの仲間(扁形動物門条虫綱)のエキノコックスという寄生虫による病気です。エキノコックスは、成虫が主にキツネの腸に寄生しています。本来、ヒトの寄生虫ではありませんが、キツネの糞とともに排出された寄生虫の卵が、何かの機会に人の口に入りますと、肝臓などに幼虫が寄生して、肝機能障害などを起こすのです。

 感染してもすぐには症状が現れないため発見されにくいです。また発見されても、いまのところ手術で寄生部分を取り除くしか方法がないため、やっかいな病気とされています。日本では、この病気の発生はほとんど北海道に限られていますが、世界的にみれば、ヨーロッパ、アジア、北米など多くの地域で同じ病気が発生しています。

 いま北海道で、キツネと人間とのつきあい方を考えるとき、この病気の特徴が問題を複雑にしています。その特徴とは、一つに、目の前にいるキツネがエキノコックスを持っているかどうか、外見からはわからないということです。

 このため、多くの人はキツネを見ても、そこからエキノコックスの危険性を実感できません。また逆に、エキノコックス症を極端に恐れる人にとっては、すべてのキツネが恐怖の対象になってしまいます。

 もう一つは、逆説的になりますが、他の寄生虫症に比べればこの病気の発生率が低く、患者が少ないことです。このことはエキノコックス症に対する無知・無関心につながり、多くの人は、たとえば餌付けによってキツネを身近に引きつけることがいかに危険であるかに気づきません。これらの特徴のゆえに、最近の北海道では、キツネの駆除を依頼する人の隣家で、同じキツネに餌をやっていたりする事態も生じているのです。

 キツネとエキノコックスに関する研究は、世界各国で行われていますが、エキノコックス症の発生をゼロにできる決定的な対策はまだ見つかっていません。このような状況で、キツネとのつきあいにいま求められているのは、彼らがエキノコックスを持っている可能性を認めた上で、発生率の高くない病気にいたずらにおびえることなく、しかしあえて危険を呼び込むような行為はしないということでしょう。

週刊朝日百科 浦ロ宏二より

posted by ss at 18:06| キツネ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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